研究概要 |
鉄シリサイド系熱電変換素材に関するこれまでの研究成果を踏まえ、加圧下における固相反応と溶融・凝固法により粒子形態・配向に異方的な微細構造を有するベータ型鉄ダイシリサイド系焼結体を作製し、熱電特性の異方性を評価するとともに、高効率化と実用化への指針を得るための基礎的研究を行った。 1.出発原料のFe,Si,Cr(P型)とCo(n型)粉末を所定比秤量・混合後・ベルト型超高圧発生装置で3〜5GPa,700〜1400℃で30分高圧焼結反応を行って焼結体を作製した。加圧焼結法として、30MPa,700〜1400℃で5時間のホットプレス焼結反応によっても焼結体を作製し、超高圧焼結法で作製した試料との比較検討を行った。 2.(1)の作製条件で1000℃以上で得られた焼結体については、シリカチューブに真空封入後850℃で168時間アニール処理を行った。 3.(1)と(2)で得られた焼結体の粉末X線解析の結果は、加圧下での固相反応による焼結体はベータ相の単一相となっていたが、加圧下での溶融・凝固法で得た焼結体は、加圧下900℃で60時間アニール処理をしても、高温相(α相)とFeSi(ε相)の混合相であった。しかし、得られた焼結体は緻密で、かつ、α相粒子は加圧軸に平行な粒子配向をした微細構造を有しており、(2)で述べたアニール処理によって、特異な粒子形態・配向を有するベータ相焼結体を作製する新しい焼成プロセスを見出したものと考えられる。 4.熱起電力と電気伝導度は、加圧軸に平行方向と垂直方向で約2倍程度の異方性を示した。 本研究で得られた加圧下での溶融・凝固法で得た混合相をアニール処理した焼結体の熱電特性の異方性の原因としては、SEM観察の結果より粒子形態・配向の微細構造によると考えられた。異方性を利用した高効率熱電変換材料開発の基礎的研究成果を得たが、ホットプレス法では十分な粒子配向制御に至らず、工業化へのプロセスは今後の課題である。
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