研究概要 |
酸化剤を用いることなく、また常温、常圧で酸化反応を達成できる点で理想的な無公害酸化手段と云える電極反応は原理的にはどのような高い酸化電位を有する有機化合物でも酸化することが可能であると考えられるが、実際には非常に高い酸化電位を有する化合物の場合には目的の酸化反応は全く起こらないか、極めて低い電流効率を与えるか、であった。その原因は溶媒あるいは支持塩のアニオン部の酸化が優先的に、あるいは競争して起こるからである。本研究で、2,2,2-トリフルオロエタノール(TFEと略)を溶媒あるいは共溶媒に用いることにより酸化のポンテシャル窓を大きく正の方向に拡大し、電極酸化反応の対象となる化合物群を飛躍的に増大する可能性があることを見いだした。 即ち、電流電位曲線およびCV測定によりTFEが約2.0VvsSCE近辺まで酸化されないことを明らかにした。次いでTFE中では従来の溶媒(メタノール、酢酸など)では全く酸化が進まないN-メトキシカルボニル-2,2,2-トリフルオロエチルアミンおよび電子吸引性置換基の付いたトルエン誘導体が高収率で酸化されることを見いだした。前者に関してはさらに、酸化生成物がカルボにる化合物のα位トリフルオロエチルアミン化試剤として利用できること、またα位が分岐したカルバメートも容易に酸化されることも明らかにした。後者に関しては、酸化生成物からベンズアルデヒドへ容易に変換し得ることを見いだした。
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