本研究の目的は、新規な光学活性含フッ素化合物の実用的不斉合成法を開発し、これらをキラル末端部に用いて、新規な強誘電性液晶を合成し、それらの液晶特性を評価することにある。 本年度は、昨年度独自に開発したシリルトリフラートを用いる不斉claisen転位手法の一般性を明確にするとともに、含フッ素系に応用したときに見られる特異な立体選択性のメカニズムを解明し、この手法が、α-モノフルオロ-およびα-トリフルオロメチル-カルボン酸類の優れた不斉合成手法になることを明らかにした。また、得られた光学活性含フッ素化合物の絶対配置を決定した。一方、ジャパンエネジ-グループは、引き続き、上記の光学活性含フッ素化合物をキラル末端部に用いて、キラル部とコア部の接合様式が異なる種々の液晶を合成し、それらの強誘電性液晶としての特性を評価した。その結果、キラル部とコア部がエステル結合で接合した系では、これらの含フッ素液晶はいずれも対応する非フッ素系液晶に比較して、大きい自発分極を示すことを明らかにし、このフッ素導入効果のメカニズムを解明した。特に、α-フルオロ-α-メチル体をキラル部としてコア部にピリミジン環をもつ液晶は、400nC/cm^2以上の自発分極を示すことを明らかにした。
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