研究概要 |
本年度は光学活性な螺旋構造を有するポリ(2,3-キノキサリン)をコーティングした充填剤による、光学活性体の分離能力について検討を行なった。 (1)コーティングに用いるポリキノキサリンの合成 我々が見出したパラジウム触媒を開始剤とする1,2-ジイソシアノベンゼン類のオリゴメリゼーションによって、ペンタ(2,3-キノキサリン)を合成し、パラジウム上に光学活性なフォスフィン配位子を導入して右巻及び左巻螺旋を有するペンタ(2,3-キノキサリン)をジアステレオマ-として分割した。フォスフィン交換によりアキラルなジメチルフェニルフォスフィンへと変換し光学活性な螺旋構造を有するパラジウム開始剤を得た。この開始剤に対し30当量の1,2-ジイソシアノベンゼン類を反応させ、分取GPCによって生成したポリマーを単離した。このポリマーは旋光度及び円二色性分散測定によって光学活性であることを確認した。また、室温溶液中においても全くラセミ化は認められなかった。 (2)ポリキノキサリンをコーティングしたシリカゲルカラムの製作 光学活性なポリキノキサリンをクロロホルムに溶解し、予備乾燥したシリカゲルに対し6回に分けてコーティングを行なった。一晩風乾した後、メタノールで洗浄し40℃で3時間真空乾燥を行なった。これをステンレス製スチールカラムにスラリー法で充填し、HPLC用カラムを作成した。 光学活性体の分割 移動相としてヘキサン:2-プロパノール=9:1を用い、流速1mL/min、温度22℃で様々なキラル化合物のラセミ体の分離を評価した。評価サンプルとしてはフラバノン、トランススチルペンオキシド、2-フェニルシクロヘキサノン、ベンゾイン、トレーガ-ベース、コバルトアセチルアセトナート、ビナフトール、ジメチルビナフチルを選び、UV検出器、及び旋光検出器を用いて検討を行なった。フラバノンではUV検出器においてもR体およびS体に由来するピークの分離が認められ、今回コーティングに用いたポリキノキサリンが光学活性体の分離能力を有することが初めて確認された。また、それ以外のサンプルにおいてはUV検出器ではピークの分離が認められなかったが、ビナフトール、ジメチルビナフチルを除くサンプルでは旋光検出器においてピークの分離が確認された。以上の結果から、本ポリマーは光学活性認識能を有することが明らかになり、今後の条件の最適化、特に保持時間を長くすることにより効率的に光学活性体の分離を行なえる可能性を示すことができた。
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