研究概要 |
1.C,D-環相当フラグメントの不斉合成法の一つを確立した。2-メチルシクロペンタン-1,3-ジオンの2位にキラルなホスホノエステル基を有するC-環合成等価単位を導入し、分子内Wadsworth-Emmons反応を行ったところ、98%deの高いジアステレオ選択性かつ高収率で望む縮合生成物が得られた。この縮合生成物より、パラジウムを用いたギ酸還元法と隣接ジオール開裂によって17-位(ステロイド位置番号)へアセチル基を導入した。科学研究費研究計画調書の段階ではアセチル基の導入前に、17-位カルボニル基を還元し、水酸基に嵩高い保護基を導入し、その後6員環部のエキソ型二重結合の還元を行う経路を採用していた。しかし、その方法より、17-位へのアセチル基導入後、6員環部のエキソ型二重結合を選択的にトランス還元する経路の方が様々な意味で合理的であることが判明し、目的のC,D-環相当光学活性合成単位の調整に成功した。まだ、改良の余地は残されているものと考えており、引き続き鋭意検討する。 2.A-環相当グラグメントの不斉合成法については、科学研究費研究計画調書に示したリンゴ酸を用いる段階的2炭素伸長、分子内Sn2反応に依る6員環合成、の方法を重点的に検討したが、結局2炭素伸長のプロセスに不可避的な問題があることが明らかになり、その解決が短期間には困難であると判断した。そこでこの方法を取り敢えずあきらめ、キラルアセチレンカルボン酸をジエノフィルとする、ジエニルアリルチオエーテルとの不斉ディールス・アルダー反応を機軸とする新しい方法を採用することとし、現在検討中である。付加生成物(3-arylthio-1,4-cyclohexadiene誘導体)はスルホキシドに変換し、エバンス転移によって2-alkoxycarbony1-5-hydroxy-1,3-cyclohexadiene誘導体に導かれるものと考えている。
|