研究概要 |
1.A-環相当フラグメントの新しい不斉合成法を開発した。本課題は前年度不成功に終わっていたので本年度重点的に検討した結果,Lーリンゴ酸由来のethyl 3,4-O-isopropylidenebutanoateを出発物質とし,そのエステル基の還元によるホルミル基への変換,アリル金属化合物の付加反応による増炭と1,3-アンチジオールの構築,末端ヒドロキシル基の酸化とそのニトリルオキシドへの変換の後,分子内[3+2]環化付加反応による基本骨格の構築を行うもので,A-環相当フラグメントの新しい短段階合成経路が確立された。ただし,1,3-アンチジオール部分の構築に関してそのジアステレオ選択性は今後改善すべき課題として残っている。 2.Lーリンゴ酸エステルの選択的還元反応に関連した研究として,ベンジリデンアセタールやアセトニドの様なアセタールのC-O結合の還元的開裂反応における新しい反応剤のシステムを開発した。BH_3とBF_3の組み合わせで用いるもので,著しい還元反応速度の促進とアルミニウム反応剤を用いる従来の方法に較べて反応後処理の簡便さが目立った特徴であり有機合成上有用である。本還元法は,アセタール基の近くに水酸基が存在する場合その水酸基で指向した選択的アセタールC-O結合開裂にも応用できる。この手法を用いて異なった保護基を有するグリセルアルデヒドの合成が可能となった。この種の化合物は従来マンニトールから合成されていたが,今回L-酒石酸を出発物質とする合成経路を確立したことにより,両鏡像体の供給が保証された。
|