本研究はオングストロームオーダーの精度で気体の超精密選択分離のできる(高分子/液晶)複合二次元超薄膜の作製プロセスの開発、液晶複合膜の分子篩機構の解明、及び気体の分子篩機能をもつモジュールの開発とその工学的応用展開を計ることを目的としている。本研究助成により次に列挙する実績が得られた。 1.分子間距離をオングストロームオーダで制御するため、分子短軸方向の置換基の大きさの種々変化させた液晶分子を分子設計し、合成を行った。その液晶物質の相転移挙動をDSC、偏光顕微鏡観察から評価し、分子間距離をX線解析測定から評価した。その結果、置換基を水素、塩素、臭素、ヨウ素と変化させるに従い、分子間距離が増加した。また、(高分子/液晶)複合膜として敵したマトリックス高分子を探索し、ポリ塩化ビニル、ポリカーボナ-ト等が目的に合致した材料であることを確認した。 2.(高分子/液晶)複合膜に電界を印加し、ガス透過性と液晶分子の配向性の関係について検討した。複合膜中で、高度な液晶分子の配向を達成するためには、液晶チャンネルに有効に電界を分配する必要がある。液晶チャンネル中に印加される電界強度を、高分子と液晶の複合誘導体モデルを用いて解析した。その結果、誘導率及び導電率の高う高分子を用いることにより、液晶チャンネルに有効に電界を印加できるとが明らかとなった。 3.(高分子/液晶)複合膜中には、両成分の界面が多く存在する。従って、高分子と液晶の界面相互作用が、ガス透過・分離特性に大きく影響を及ぼすと考えられる。複合膜の誘電的解析に基づいて、高分子と液晶の界面相互作用を検討した。液晶としてシアノビフェニル系物質を用いた場合、ポリメタクリル酸メチルのような屈曲性高分子を用いた場合は、高分子と液晶の界面が相溶した状態にあるが、ポリフマレート等の如く主鎖の剛直性が高い場合には、界面においてシャープに相分離していることが明らかとなった。
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