研究課題
本年度(平成6年度)は、研究の初年度であったので、準備的な研究を主として行った。『長期岩盤モニタリングシステムの開発と実用化試験』という研究テーマに沿うべく、文献調査、資料収集を始めとして、波形解析とデータ処理のためのソフトウェア開発を行った。また、岐阜県の神岡鉱山をフィールドに選び、自作したAEセンサーを埋設して予備的な計測を行った。実験の概要は以下の通りである。既説の坑道から上向きに5mの垂直孔を4本穿孔し、この中にAE(微小地震)を検知するセンサーを1孔に1本づつ埋設した。孔と孔の間隔は約10mであって、正方形を形作るように配置されたが、その中央を明瞭な傾斜70度の亀裂が1枚走っている。AEセンサーは岩盤内に発生する微小なAE音を捉えるのが本来の目的であるが、まず、岩盤の弾性波伝播特性、減衰特性や亀裂の影響を明らかにする必要がある。そこで、正方形格子の内部及び外部に15孔にのぼる垂直上向き孔を別に穿孔し、この中で精密雷管を起爆して人口地震を発生させ、雷管の爆轟波を4本のセンサーによって捉えた。人口震源の位置を変えて、震源とセンサー間の弾性波伝播速度、亀裂を挟むことによる影響、センサー間の感度補正、減衰定数、波形解析、震源同定の精度チェック等を行った。主な結果は次の通りである。岩盤中の弾性波伝播速度としては、5220m/secの値が平均値として得られ、観測波形のパワースペクトラムから、周波数ごとの減衰特性値であるQ値を求めたが、高周波成分の減衰が著しいことが解った。しかし、残念ながら、今回の計測では、亀裂の影響が明瞭には現れなかった。また、計測中に天然のAEを捉えることができなかったので、来年度は地圧条件の厳しい深部に計測ステーションを設ける予定である。いずれにしても、現位置計測のシステムと計測データ処理システムに関する作業が終わったので、来年度の本格計測の準備は整った。
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