研究課題/領域番号 |
06555311
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山富 二郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (70107548)
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研究分担者 |
竹内 達也 ユナイテッドシステムエンジニア, 研究本部, 研究本部長
茂住 洋史 神岡鉱業, 地下利用事業室, 研究開発担当主査
安達 毅 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (40262050)
茂木 源人 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (70182160)
佐々木 久郎 秋田大学, 鉱山学部, 助教授 (60178639)
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キーワード | 岩石力学 / モニタリングシステム / AE / 微小地震 / 弾性波伝播速度 / 減衰特性 / ソースロケーション / 波形解析 |
研究概要 |
昨年に引き続き『長期岩盤モニタリングシステムの開発と実用化』を目指して、神岡鉱山における現場実験を計画した。昨年までの現場実験から、選んだサイトでは自然のAEの発生が少ないことがわかったので、深部の採掘切羽周辺に測定現場を移すことを考え、鉱山との打ち合わせを行った。しかしながら、一昨年来の円高傾向に一層の拍車がかかり、打ち合わせを行った1995年初夏の段階では、円の対米ドルレートが80円を割る状況となって、神岡鉱山の経営と操業そのものが深刻な危機となった。その後、円安に戻ったものの、神岡鉱山の主生産物である鉛・亜鉛の国際市況の低迷は続いており、現在も依然として厳しい状態にある。このため、神岡鉱山にこれ以上負担を掛けることが難しいと判断し、実験室を中心とした実験に計画を改めることにした。本年度行った実験室実験から得られた主な知見は以下の通りである。 1)来待砂岩・田下凝灰岩・三城目安山岩の3種の岩石について、単軸圧縮試験と単軸引張試験を行い、載荷に伴って発生するAEを2つのセンサーによって観測した。 2)圧縮試験で観測されたAE波形の振幅スペクトルを分類したところ、主なものとしては、100kHz前後に際だった卓越周波数をもつのと、50kHzと100kHz前後に卓越周波数を持ち低周波領域の波も優勢な2つのタイプに分かれることがわかった。来待砂岩と田下凝灰岩では前者が多く、三城目安山岩では後者のタイプが多いことがわかった。しかしながら、3種の岩石が持つ岩石力学的特徴あるいは破壊様式との関連を見出すことができなかった。 3)引張試験では、低周波の波に高周波の波が重なったタイプのAE波形が観測され、その卓越周波数は20kHz前後であり、圧縮試験で観測されたAE波形の特徴と明らかに異なるものであった。しかし、20kHzという周波数は用いた試験片の固有振動数に相当するものであって、引張破壊に固有のものであるか否か、明確な結論を引き出すことはできなかった。 4)一辺が45cmの大理石の立方体ブロックを用い、ハンマー打撃による人工震源を使って、AEのソースロケーションの模擬実験を行った。この実験には合計8つのセンサーを用い、8つのセンサーによって観測された受信波から震源を逆算し、その誤差を求めた。理論的には5つのセンサーで震源の可能であるが、センサー数の増加、配置の改良によって推定誤差がどの程度減少するかを明らかにした。 昨年と今年の研究によって、長期モニタリングシステムの基本システムの試作に成功したと判断している。
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