研究課題
試験研究(B)
岩盤の長期安定性を評価するためのモニタリングシステムの開発と実用化試験を行った。モニタリングの手法は、岩盤内部に発生した微小な破壊にともなって、発せられるAEと呼ばれる弾性波信号をとらえるものであり、岩盤の大規模な異常現象を予知することを目的とする。また、モニタリング岩盤周辺で行われる掘さくによって、誘起される応力の再分配とこれに伴う不安定挙動の震源を突き止め、災害防止に役立てようというものである。まず、AE信号をとらえるためのセンサーを自作した。岩盤の中に長期にわたって埋め込むことが条件であるため、共振周波数が100〜200kHzの圧電素子にオペアンプとハイパスフィルタを一体化したものを制作した。AEセンサーの性能を評価するとともに、モニタリングシステムの実用化を目的として、室内実験を実施した。3種の岩石について、単軸圧縮試験と単軸引張試験を行い、載荷に伴って発生するAEを自作したセンサーによって観測した。圧縮試験で観測されたAE波形の振幅スペクトルを分類したところ、主なものとしては、100kHz前後に際だった卓越周波数をつものと、50kHzと100kHz前後に卓越周波数を持ち低周波領域の波も優勢な2つのタイプに分かれることがわかった。しかしながら、3種の岩石が持つ岩石力学的特徴あるいは破壊様式との関連を見出すことができなかった。また、引張試験では、低周波の波に高周波の波が重なったタイプのAE波形が観測され、その卓越周波数は20kHz前後であり、圧縮試験で観測されたAE波形の特徴と明らかに異なるものであった。しかし、20kHzという周波数は用いた試験片の固有振動数に相当するものであって、引張破壊に固有のものであるか否か、明確な結論を引き出すことはできなかった。さらに、一辺が45cmの大理石の立方体ブロックを用い、ハンマー打撃による人工震源を使って、AEソースロケーションの模擬実験を行った。最後に、岐阜県神岡町の神岡鉱業(株)神岡鉱山栃洞坑において、人工震源を使ったAEセンサーの性能試験、現位置の岩盤の弾性波速度と減衰定数を測定した。残念ながら、現位置試験中に自然原因のAEを観測することはできなかったが、モニタリングシステムの検証を行うことができた。