研究概要 |
PC-88Aを多孔性樹脂に含浸させた含浸樹脂を用いて、希土類の分離特性をバッチ操作およびカラム操作で検討した。さらに、7成分を含む重希土残渣の浸出液からDy, Y, Tm, Ybを分離するプロセスの開発を行った。得られた成果を要約すると次のようである。 1)含浸樹脂の細孔径分布や比表面積を測定して、抽出剤が多孔性樹脂の細孔内に物理的に吸着および保持されていることを明らかにした。 2)含浸樹脂の劣化試験を行い、20回程度は繰り返し使用することが可能であるという結果を得た。 3)含浸樹脂による希土類の吸着は、水溶液中の金属イオンとPC-88Aの水素イオンとの陽イオン交換反応で行われ、溶媒抽出法でこの抽出剤を使用するときと同程度のpH域で生じる。吸着速度は、従来の陽イオン交換樹脂による吸着速度と同程度である。溶離は塩酸などの無機酸を用いて容易に行うことができる。 4)含浸樹脂をカラム法として用いて分離試験を行ったところ、Nd/Sm系やTb/Ho系のような分離係数の大きい2成分系では、原子番号の小さい希土類を吸着工程で回収し、原子番号の大きい希土類を溶離工程で回収することが可能であった。 5)破過点を検出するセンサーの開発を行い、希土類塩化物溶液が着色していることから適切な波長の可視および紫外線吸光度の測定によりセンサーとすることが可能であることを明らかにした。センサーシステム(プロセス比色計)の設計を行い、システムを完成させた。 6)重希土残渣の浸出液からDy, Y, Tm, Ybを分離するプロセスの開発を行い、吸着工程での分離は困難であるが、溶離工程で展開カラムを設けて溶離剤である塩酸濃度をpH2〜pH0に徐々に変化させることによりDy, Y, Tm, Ybの分離を達成した。
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