昨年度には、共同研究者の所属する農水省農業研究センターにてリポキシゲナーゼ欠失ダイズ品種の九州11号と高脂肪品種の吉林10号を交配して30系統のリポキシゲナーゼ欠失性を有するものを選抜したが、今年度はそれらの系統についての脂肪含量の分析を漸く終えたところである。脂肪含量は吉林10号並みの系統が2系統程度認められた。しかし、ここではリポキシゲナーゼによって引き起こされる脂肪の酸化劣敗の程度が欠失系統では軽減されるとの予測が正しいかどうかが最も重要なところであるが、この点については、まだ分析が進んでいない。来年度に行う予定である。 蛋白質に関する欠失性の自然及び人為の突然変異を交雑により1遺伝子型に集積し、種子貯蔵蛋白質の分子種構成が単純化された系統を作出する試みを行い、その結果、7Sグロブリンのβサブユニットだけが残存し、その他のものが全て欠失している系統を選抜することに成功した。これによって高脂肪含量のダイズ系統が育成できるのではないかと期待している。まだF2世代の種子であり、平成8年度になればF2世代の植物からF3世代の種子を獲得することができるので、それを待って期待どおりになるかどうかを検証したい。 一方、種子貯蔵蛋白質と脂肪の種子内での生成過程を電子顕微鏡レベルで明らかにするため、開花後の種子の発達段階に応じて種々の標本を作り、透過型電子顕微鏡観察を行い、プロテインボデイ(蛋白質)やスフェロゾーム(脂肪)の発達と粗面小胞体やゴルジ体及び液胞の関係について種々の興味ある結果を得た。
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