植物ミトコンドリアの形質転換システムの開発

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06556002
• 研究種目: 試験研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 平井 篤志 東京大学, 農学部, 教授 (60023470)
• 研究分担者: 吉羽 洋周 日立製作所(株), 基礎研究所, 主任研究員 ; 堤 伸浩 東京大学, 農学部, 助手 (00202185) ; 長戸 康郎 東京大学, 農学部, 助教授 (10143413)
• キーワード: イネ / ミトコンドリアゲノム / 形質転換 / エディティング

研究概要

ミトコンドリアは生物エネルギーの変換を行う重要な器官で、これの効率化はすべての作物に重要である。ミトコンドリアの機能は遺伝的には核とミトコンドリアゲノムの二元的支配を受けている。このうち、母性遺伝を行い交雑で改良できないミトコンドリアゲノムは遺伝子導入法がなく、その開発が待たれている。
本研究はミトコンドリアのプラスミド様DNAがミトコンドリア内で安定的に増殖することに着目し、これを改変して形質転換のためのプラスミドを構築しようとするものである。選択マーカーにはアンチマイシン耐性に変異させたcob遺伝子を用いることにし、エディティングを受けた後の遺伝子とそのままの遺伝子両方を使用することにしている。
形質転換用プラスミドはミトコンドリアで発現するatpl由来のプロモーターをGUS遺伝子につないだものを作出した。さらに形質転換植物の選抜に用いるためのcob遺伝子をエディティングを調べた。5個のcDNAクローンを調べた結果397個のアミノ酸をコードする1191個の塩基の内、部分的も含めて19塩基でエディティングが行われていた。
イネミトコンドリアには自己増殖能を持つプラスミド様DNA(B1〜4)が知られているが、新たにM1、M2、M3を発見し、それらの全塩基配列を決定した。これらのプラスミド様DNAには共通の祖先から進化したことを示す共通な配列があり、その中からミトコンドリア内でのDNA複製に必要な配列を探索中である。

研究成果

• [文献書誌] Watanabe,N.et al.: "Evolutionary variation in DNA sequences transferred from chloroplast genomes to mitochondrial genomes in the Graminae." Curr.Genet.26. 512-518 (1994)
• [文献書誌] Kanazawa,A.,et al.: "Reverisible changes in the composition of the population of mtDNAs during dedifferentiation and regeneration in tobacco." Genetics. 138. 865-870 (1994)
• [文献書誌] Itadani,H.,et al.: "Nucleotide sequence of a 28 kbp portion of rice mitochondrial DNA:the existence of many sequences that correspond to parts of mitochondrial genes in intergenic regions." Plant Cell Physiol.35. 1239-1244 (1994)
• [文献書誌] Nakazono,M.et al.: "The rps3-rp116-nad3-rps12 gene cluster in rice mitochondrial DNA is transcribed from altemative promoters." Curr.Genet.27. 184-189 (1995)
• [文献書誌] Nakazono,M.et al.: "Homologous recombination mediated by two palindromic repeated sequences in the mitochondrial genome of Orvza." Theor.Appl.Genet.(in press.).
• [文献書誌] Nakazono,M.et al.: "The CRTA motif is present in the promoters of mitochondrial genes of rice." Plant.Sci.(in press.).