研究概要 |
収穫した果実を脱渋処理することなく,即ち渋果の状態で低温貯蔵して出庫後に脱渋処理をする.このことによって貯蔵期間の延長を図る.さらに出庫時に貯蔵温度との較差の少ない低温にて,短時間の炭酸ガス処理によって果実の脱渋を完了させ,炭酸ガス障害を出来る限り回避して脱渋後の果実軟化を遅延させる.このような目的で研究を進めているが,ここでは平成7年度試験研究の組織学的調査について報告する. 1)縦長・円錐体の特徴的な果形を示す西条柿では同一果実内において果肉の硬度に収穫時でも差異があった.果実を縦方向に果実先端の果頂部,果実横径が最大の果実肥大部,そして果蒂に近い果実基部の三部分に分けると果頂部の果肉硬度が最も低く,反対に果実基部が最も高く,果実肥大部はその中間であった.また果実を横方向,即ち果肉から中心維管束の分布する果芯方向へ直角に順次測定すると,果皮下からの距離の違いで果肉硬度に差異があった.果皮直下から約8mmまでは果皮から離れるほどに硬度は低下し,果皮下約8mm以上で硬度が最も低かった.しかし,果皮下約8mmから果芯までの果肉には硬度の違いはなかった.貯蔵中にも果実の各部位ともに果肉硬度は低下し,特に果頂部,果皮下8mm以上のそれは著しく.収穫時320gが貯蔵40日で162gであった.また,脱渋処理によって果皮直下から8mmまでに分布する果肉の硬度低下が顕著で,注目に値する.2)果皮から果芯への横方向に果肉細胞の大きさ,形及びその配列に特徴があり,果皮直下約3mmまで,果皮直下約3mm〜8mm,そして果皮直下8mm以上に区分でき,果皮に近いほど細胞は楕円形で小さく,その配列も緊密であり,果皮から離れるほど細胞は円く,大きくなり,その配列は緊密性に欠けていた.顕微化学的に細胞壁をみると,貯蔵中にその壁は薄くなり,セルロースの染色が低下した.また,脱渋処理は細胞壁の収縮を誘導するが構成成分に影響しなかった.なかでも果芯に近い果肉細胞でこれらが顕著であった.
|