研究概要 |
カイコの生産する絹フィブロインがフィブロインH鎖(分子量約35万)、フィブロインL鎖(分子量2.5万)、P25(分子量2.5万)の3種類のタンパク質の分子複合体であること、H鎖、L鎖はジスルフィド結合しているが、P25がは非共有結合でこれらと会合していることをこれまでの研究で示してきた。本年度は以下の研究を進めた。 1)フィブロインH,L鎖間のジスルフィド結合部位の解析:H鎖のC末端付近にはC末のCysを含めて3残基のCysが存在する。C末とこれに近接したCysを含むトリプシン分解ペプチド断片が分離して、両Cysが分子内ジスルフィドを形成していることを示した。C末から3番目のCysがL鎖のCys-190とジスルフィド結合していることが推定されるので、H-L複合体をリジルエンドペプチダーゼで分離して逆相FPLCで分離し、H鎖、L鎖のそれぞれのCysを含むペプチドに対する抗体を反応させ、両抗体がともに反応するペプチド画分を分離した。現在このペプチドを過ぎ酸分解して分解産物ペプチドを分離、アミノ酸配列を決定する実験を進めている。 2)25の電気泳動的多型について:非還元状態でP25をSDS-PAGEで分析すると27kDaの主成分と24kDaの微量成分に分かれる。27kDa成分はConAと反応することからマンノースを含む糖鎖を結合していることが推定された。フィブロインH,L鎖間の結合が出来ない分泌異常変異カイコではP25は24kDa成分が主成分となることから、正常なH-L結合とそれへのP25の会合がP25の糖鎖修飾に必要であることが推定された。 3)他種の絹糸昆虫におけるフィブロイン低分子成分の検索:還元および非還元条件下のSDS-PAGEにより、マツケレハおよびアゲハチョウの絹糸タンパク質がカイコのL鎖、P25と同様の成分を含むことが見い出された。
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