研究概要 |
カイコの後部絹糸腺で生産、分泌されるフィブロインがフィブロインH鎖(分子量約350k)、フィブロインL鎖(分子量約25k)、P25(分子量約25k)の3種のタンパク質の複合体であることを示したが、本研究はこれらの各成分の結合様式の解明と、他種の絹糸昆虫におけるL鎖、P25の相同タンパク質の存在の確認ならびに構造解析を目的とするものである。 1)H、L鎖間のジスルフィド結合部位の決定:H-L複合体の精製、リジルエンドペプチダーゼ消化物の逆相カラムクロマトグラフィーによる分画、H,L鎖それぞれの推定ジスルフィド結合部位周辺のペプチドに対する抗体反応により、ジスルフィド結合を含むペプチドの分離、還元、生成ペプチドの分離、アミノ酸配列決定により、L鎖中のCys-160とH鎖のC末端から20残基目のCysの間でジスルフィド結合が形成されることを明らかにした。 2)P25の精製と糖タンパク質としての性質:P25はフランスのP.Coubleらにより遺伝子クローニングがなされたが、タンパク質としての研究はこれまで行われていなかった。本研究では遺伝子配列から推定されるペプチド配列を合成し、抗ペプチド抗体を作製して、この反応を指標として大量のフィブロインから逆相カラム、抗体カラムなどによりP25を精製する方法を確立した。P25はフィブロイン分子複合体中の唯一の糖鎖結合タンパク質であることをConAとの反応性、N-グリコシダーゼFによる脱糖鎖から示した。H-L結合の出来ないNd-s,Nd(2)変異カイコのP25は糖鎖の結合状態が異なることが示唆された。 3)マツカレハ、アゲハチョウのL鎖、P25相同タンパク質のcDNAクローニングが進行中である。
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