(1)我々のサブサイトの改変により耐熱性低下を引き起こすことが明らかになった改変体Trp190PheとC/P比が上昇したTrp75Asnとが組合わさったキメラ蛋白を作製したところ、C/P比が2.6倍上昇すると共に耐熱性も低下し、55℃、15分間処理で1%以下の残存活性を示し、より実用に適した人工的酵素の作製に成功した。 (2)ムコールレンニンを生産するRizomucor pusillusを化学変異剤で処理し、熱安定性が大きく低下した変異株を得ると共にそのムコールレンニン遺伝子をクローニングし、塩基配列を解析した結果、101番のAlaがThrへ、186番のGlyがAspへ変異することによって熱安定性の低下が起きていることが明らかになった。R.pusillusからの変異ムコールレンニンの生産量は極めて低かったため酵素学的諸性質の詳細な解析はできなかったが、我々が開発した酵母からの分泌系を用いて大量に生産させると、特に、Gly186Aspでは熱安定性のみが大きく低下しており凝乳活性やC/P比などの凝乳酵素としての特徴に全く悪影響を与えていないことが分かった。これらの結果は酵素への人工的変異の導入によって、産業的に改良された酵素の取得が可能であることを示す先行的な事例となるものと考えられる。 (3)ムコールレンニンを生産するR.pusillusでは宿主・ベクター系の開発が報告されていなかったため、我々は分子生物学的解析のために、栄養要求性の相補による形質転換系の確立を目指し、紫外線照射によって得られた栄養要求性変異株の中から、ロイシン要求性株を選択し、これらの中から、菌体内にLeuA遺伝子産物のa-イソプロピルリンゴ酸異性化酵素の活性を持たない変異株を1株取得した。この変異株にMucor circnelloides LeuAを導入する事によって、mg当たり30個の形質転換体を得る事に成功した。
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