野性子実体より純粋分離したマツオ-ジ、スギヒラタケ菌の培養生理的特性(栽培適温、培地組成、初発pH、培養環境)を検討し、適性種菌の選抜をおこなった。いずれの種菌も好中温菌(最適温度28℃)で、初発培地pH5.5のポテト・グルコース培地で良好な成長を示した。スギシラタケ菌系は合成培地で、培地pHを酸性またはアルカリ性化することを発見した。各菌系を対象にアイソザイム分析を検討した。購入した冷却遠心機は多数の種菌の菌体蛋白質効率的抽出分離に大変、有用であった。スギヒラタケ菌のペルオキシダーゼ、エステラーゼ、酸性フォスファターゼ、GOY、MDHのアイソザイム・パターンを検討したところ、子実体源基の発生と関連してペルオキシダーゼとエステラーゼが有用と判明した。マツオ-ジについては現在検討中である。 スギ、マツ木粉による菌床袋栽培を実施し、マツオ-ジ菌のスギ、マツ木粉をもちいる袋栽培方は、良好な結果を得た。しかし、スギヒラタケ菌は米糠添加培地での培養も試みたが、源基形成に留まった。 スギ伐根での林地栽培を大学演習林内にて試みた。マツオ-ジ菌は雑菌により浸食され困難であった。スギヒラタケ菌は菌の活着はみとめられたが、成長は遅く、さらなる改良が必要と判断された。 新鮮なスギ心材あるいはスギヒラタケ腐朽伐根の抽出成分の検索と比較により、抽出物は寒天培地でマツオ-ジおよびスギヒラタケの菌糸成長阻害を惹起するが、相対的に腐朽材抽出物の効果の方が弱く、また、フェルギノールは消失していることが認められた。子実体形成との関係は今後、調査する予定である。
|