研究課題
基盤研究(A)
スギ材および低質広葉樹材からのエクステイリア用材や家具用材などの開発を目的として、フェノール樹脂注入処理を検討した。フェノール樹脂注入処理の効果をより十分なものとし、実用を進めるためには遊離のフェノール、ホルムアルデヒドおよび縮合重合体の含量の小さい中性〜微酸性のメチロール化フェノール単量体混合物が望ましい。現在樹脂メーカーが製造している樹脂液では不十分であり、メチロール化フェノール単量体混合物の合理的な製造方法の確立が必要である。このため、フェノールの水酸化ナトリウム触媒下におけるメチロール化反応を速度論的に検討した。フェノールから2種類のモノメチロールフェノール、2種類のジメチロールフェノールを経てトリメチロールフェノールが生成するまでの過程の7つの反応をコンピュータシミュレーションの手法で解析し、速度定数と活性化エネルギーの値を求めた。それらの結果から、水酸化ナトリウム/フェノールのモル比が高いほど、また、反応温度は低いほど遊離のフェノールが少なくなることが明らかになった。スギの円柱材や角材へのフェノール樹脂注入を検討し、割れの発生が抑制されること、および耐候性が改善されることから、柵やベンチなどを試作してアウトドア用材としての性能を検討した。また、フェノール樹脂注入スギ角材の表面層圧密化を行い、テーブル材としての性能評価を行った。アウトドア用材は屋外暴露試験を継続中であるが、良好な成績が期待される。また、表面層圧密化したフェノール樹脂注入スギ材は軽量で十分な表面硬さを有し、家具材として十分な性能であることがわかった。