研究課題
鶏卵抗体含有餌料を用いて海産魚の主要疾病の制御法を開発することを目的として、本年度は鶏卵抗体の卵黄からの抽出法、餌料への配合方法、餌料中での安定性、魚に対する安全性、主要疾病に対する予防効果などを調べた。鶏卵抗体の卵黄からの抽出法はエタノール、超臨界炭酸ガス脱脂法が、作業コスト、操作および安全性などの点から優れていた。すなわち、エタノールによって卵黄粉末中のリン脂質を、超臨界炭酸ガス脱脂法によって残存溶剤および中性脂質を除去して粉末化する方法である。これらの操作によって抽出された鶏卵抗体には、失活は認められなかった。また、同粉末から水溶性タンパク質を抽出し、硫酸ナトリウム塩析操作および、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによって、純度約95%以上の鶏卵抗体の精製品を得ることも可能であった。鶏卵抗体の餌料への配合方法は通常の卵黄粉末を用いる操作と同様に、魚粉、魚油および水とともに混合し、ペレットを形成することが可能であった。現在、このように調製されたペレット中での鶏卵抗体の安定性については検討中である。鶏卵抗体含有餌料のブリに対する安全性を検討するために、鶏卵抗体を餌料に1から3%配合し、約1年間毎日投与したところ、これらの魚に異常は認められなかった。ブリの脹球菌症に対する予防効果を調べたところ、鶏卵抗体含有餌料を投与していた試験区は、対照の餌料を投与していた試験区と比較して、死亡魚の数が少ないことが確認された。