本研究では農業土木構造物の耐震設計に関して、次の2項目の成果を得ることができた。 1.砂質材料で構築された盛土の液状化に対する信頼性設計 動的土質定数の変動性と地震動の確率特性を考慮した液状化確率の算定を行っている。液状化の簡易な判定法としては、N値の分布に基づく簡易法がよく用いられる。この方法によると動的せん断強度比RがN値、平均粒径D_<50>、細粒分含有率F_Cなどの簡易なパラメータによって決定される。ところが、これらの土質定数は、空間的に大きく変動しており、統計モデル化が必要とされる。本研究では、第一に、この適切な統計モデルの決定法に関する考察を行った。次に、地震時せん断応力比に関しては、地震時の最大加速度を決定する必要がある。そこで、主な歴史地震を調べることにより、地震の年最大加速度の統計モデルを決定した。最終的に、これらの統計量にモンテカルロシミュレーション法を適用することにより、液状化確率を求めた。それに加えて、地盤がサンドコンパクションパイルによって改良される場合の最適設計について考察を行った。期待総費用最小化の理論を用いることにより、最適な砂置換率とその場合の液状化確率を決定している。その結果、最大水平速度150gal、200galの地震を想定した場合と地震の確率特性を考慮した場合の最適地盤改良計画、すなわち最適な砂置換率を決定することができた。 2.淡路島におけるため池被害に関する因子分析 兵庫県南部地震により、淡路島では多くのため池が被害を被った。研究グループは、淡路島の被害ため池の調査を実施した。その結果に基づき、被害率とため池の震源からの距離および震源と堤軸の法線のなす角、堤体の築堤年代、堤体材料、地質特性等との相関分析を数量化II類を用いて行った。解析の結果、各要因が被害率に与える影響の度合いが明らかにされた。
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