研究概要 |
平成6年度の研究経過は,まず,生育中の植物の画像データから16〜64階調の濃度共起行列を計算するアルゴリズムの開発を行い,植物体の画像データをTVカメラで適宜撮影して画像処理ボードを経て前処理する方法で、1次データを得てビデオテープに保存する方法を採用しシステムを構築した.また,2次データは光磁気ディスクに保存することにした.同じく,画像の特徴量および環境パラメータを入力とし,物理的あるいは病理的に植物の状態を表現する生態情報を出力とするカルマンニューロ計算システムを構築した.ソフトウェア開発と平行して実験システムの設計・制作を行った.主な実験装置は現有の通常の人工光型ファイトトロン(小糸工業製)にガス環境などの環境制御部分を追加して用いた.供試作物は軟弱野菜および稲(大阪府立大学で作出した超矮性稲)を用い,水耕栽培した.画像特徴量と共に用いる入力情報である環境パラメータは,光,温度,二酸化炭素濃度および湿度とした.目的の出力生体情報は植物の水ポテンシャル(サイクロメータ法による葉の水ポテンシャル測定),光合成速度(二酸化炭素濃度測定),蒸散流速などをニューロのトレーニングデータ用に計測した.データのロギングはパソコンで行った. 当初に計画した研究方法および研究計画にしたがって平成6年度は研究が遂行され,アルゴリズムの開発,カルマンニューロ計算システムの構築,計測システムのセットアップなどのいずれのプロセスにおいても予定されていた水準の結果がえられた.特に,テクスチャー解析により得られる14種の画像特徴量の内,カイワレ大根の生長に伴う変化率が比較的大きいものとして「一様性」,「コントラスト」および「局所一様性」の3種のパラメータで植物が種子状態,発芽初期,胚軸伸張期あるいは胚葉展開期などを的確に予測しうるに十分なパラメータであることが明らかとなったことは大きな成果である.しかし,共起行列の要素間の距離および角度を多様に選択できるという自由度の有効性について平成7年度の研究において明らかにする必要があろう.
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