研究課題
基盤研究(A)
エンドセリン-1(ET-1)は1985年にブタ血管内皮細胞の培養上清より単離された血管収縮性ペプチドである。また、エンドセリン受容体もクローニングされ、ET-1に対して高い親和性を示すA受容体(ETA)と、エンドセリン類に対して非特異的な親和性を示すB受容体(ETB)が同定されている。他方、エンドセリンは血管や内皮細胞だけでなく、今では中枢も含めて生体内のほとんどの組織にその発現が認められているが、その生理的役割および疾患における病態生理的作用についてはいまだ確定した知見は得られていない。その原因の一つとして、既存のエンドセリン受容体作動薬および拮抗薬が、ETAおよびETBの2つの受容体しか存在しないという前提でなされてきたことにあると考えられる。本研究は、エンドセリンの生理的ならびに病態生理的役割を明らかにし、エンドセリンが関与すると疾病の予防ないしは治療に役立つ医薬品の開発への手掛かりを得るために、ETA、ETB両エンドセリン受容体、ならびにそのサブタイプの選択的作動薬・拮抗薬を開発し、実用化することを目的とした。その結果我々は種々のET-1のC末の誘導体の中からETB選択的作動薬であるIRL1620を見いだし、試薬としての実用化をはたした。IRL1620のETBに対する選択性は、これまでに開発された他のETB作動薬に比べて選択性が高く、しかも125Iによる標識が容易にできることから、放射活性をもつETB選択的作動薬(トレーサー)としての実用化もなされた。続いて、微生物が産生する活性物質の中からETB受容体の選択的な拮抗薬であるRES701-1を見つけることが出来た。この拮抗薬はもう一つの拮抗薬であるBQ708とは異なった作用を示し、ETB受容体にサブタイプが存在することを証明する大きな役割を果たした。
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