本研究は、組織における血流動態をビデオカメラで観察し、その画像を処理することによって血管内から組織への酸素の移動を2次元のイメージ画像として捕らえ、組織における微小循環動態と酸素移動との関係を明らかにするものである。すでに微小血管領域でおこなってきた1点での測定を2次元の平面イメージに広げ、しかも時間的に連続した動画像をつくることで、酸素飽和度の変化を2次元的かつダイナミックに捕らえ、微小循環領域における酸素移動の動態をよりわかりやすく把握できる装置を開発することを目的とした。本年度は、この様な二次元画像を得るための計算ソフトの開発ならびに基礎実験に成功した。 微小血管網を顕微鏡で観察し、同じ部位を波長の異なった6枚の干渉フイルターを通して計6枚の顕微鏡画像をビデオカメラで捕らえた。この画像を画像処理装置を用いてデジタル化し、一画像を512×480サイズでコンピュータ内に取り込んだ。これらの画像データをもとに6枚の吸光度2次元画像を作成した。6枚の画像の対応する各点(512×480点)について吸光度を求め、ついで各点の吸光度が微小血管内を流れる赤血球内の酸素化型と脱酸素化型ヘモグロビン量の和と散乱量からなることを利用して重回帰計算を行い、微小血管を流れる血液のヘモグロビン量ならびに酸素飽和度の2次元イメージを作成することに成功した。さらに、開発した装置を用いてウサギ腸間膜の微小血管網について実験を行い、微小血管内を流れる赤血球の脱酸素化にとおなう酸素飽和度の変化を2次元画像として表示することができた。 さらに、本研究を進める上での基礎実験として、微小血管内を流れる赤血球の動態を解析する目的で赤血球集合の影響を検討し、特異な赤血球流動と循環抵抗の緩和作用を観察した。
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