研究概要 |
末梢組繊の徹小血管ネットワークにおける赤血球の酸素飽和度と赤血球の流動状態を示す二次元画像を作成するための装置を試作し、その応用を試みた。1.装置は、倒立顕微鏡、ビデオカメラ、干渉フィルター、画像処埋装置およびコンピュータで構成した。赤血球内ヘモグロビンの酸素化型と脱酸素化型の吸収スペクトルの差を利用し、画像演算を行い、微小血管を流れる血液の酸素飽和度ならびに赤血球の濃度分布状態の2次元画像を作成した。同時に、微小血管断面における各プロフィルを得た。2.本装置は、[ヘマトクリッツト,%]・[微小血管の内径,mm]<4.5の範囲(したがって、酸素放出の起こる微小血管領域)で、定量測定が可能であり、測定精度は±10%以内であった。3.微小血管網を流れる赤血球が細動脈から細静脈に到る過程で酸素を放出する様子が画像化された。微小血管網における赤血球の分布状態に関しては、血漿層の形成状態、ファーレウス効果ならびに逆ファーレウス効果の様子が表示された。4.微小血管を流れる赤血球流速の低下にともない赤血球からの酸素放出の促進が観察された。pHが酸性になるにつれて、赤血球からの酸素の放出は増大した。5.赤血球のレオロジー的性質の変化(ヘマトクリット、赤血球の変形能と集合現象)ならびに血管の弾性が赤血球の微小循環動態、特に血漿層ならびに灌流抵抗、に及ぼす影響ついて定量的に評価された。微小血管における赤血球からの酸素の放出への影響は今後の検討課題である。6.本装置の原理を応用して反射スペクトルによる解析を行い、脳表面の微小血管内を流れる赤血球の酸素飽和濃度2次元画像を得た。7.様々な生体組織への応用に向けて、ハードウエアならびにソフトウエアの改良が今後の課題である。
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