1.核膜複合体の調整およびそれへのパッチクランプ法の適用に成功している。インサイドアウト膜、全核膜記録法等、パッチクランプ法の基本手技はすべて可能となった。小胞体膜上に単一チャネルレベルでのカルシウム依存性カリウムチャネルの存在を認めている。このチャネルは小胞体内腔のカルシウム濃度に依存する。つまり、カルシウム濃度が高ければ開確率が増す。小胞体内腔のカルシウム濃度は100-200マイクロモル程度とされており、この濃度ではチャネルの開確率はほぼ最高値にたっする。このチャネルは、つまり、膜電位を固定することで、イノシトール三リン酸受容体を介した小胞体からのカルシウム放出量を調節する役割を担うらしい。 2.膵腺腺房細胞での膜容量計測の実験から、カルシウムによる小胞のプライミングは局所小胞領域で行われ、膜直下での融合自体には不要であることを示唆する結果が得られた(投稿中)。さらに、プライミングはカルシウム振動に追随しうることも解った。カルシウム振動に対する、上記小胞体膜カルシウム依存性カリウムチャネルの関与は今後追求されるべきである。 3.顆粒発芽機構には小胞体内腔のカルシウム濃度と細胞質カルシウム濃度の双方が関与するらしい。現在この点を確かめるべく実験を進めている。 4.核膜複合体へアプローチするための電気的基本技術はほぼ確立したが、核膜孔への適用には成功していない。標本の選択が必要であり、画像解析の適用も考慮しつつ、巨大な核をもつ骨髄巨核球につき実験を進めている。
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