研究課題
研究代表者らは、脳内の生理活性物質であるプロスタグランジン(PG)D_2とPGE_2の睡眠・覚醒に及ぼす作用に関して研究を続けており、特に最近では、PGD_2の作用部位が、以前から予想されていた視束前野より実際にはより吻側部の脳底領域に存在していることを明らかにした。さらに本研究では、この新しい部位でアデノシンのアゴニストをはじめとする種々の物質が、睡眠・覚醒に対し顕著な作用を示すことが見出されてきている。これらの諸結果は近い将来、種々の疾患で見られる睡眠・覚醒障害の病態生理を解明するうえで、さらにそれらの治療法の開発の上で、有力なデータとなるであろうと予測している。具体的には、PGD_2の2つのアゴニストで、PGD_2同様の睡眠促進作用が認められており、また、当側部位近傍にそのレセプターが豊富に存在することが知られているアデノシンについてもそのアゴニストがやはり睡眠・覚醒に対して非常に顕著な作用を示すことなどが明らかになりつつある。ところが、当該部位の近傍に存在する神経細胞のイボテン酸による破壊実験では、ある程度の不眠ラットを作成することはできるが、今のところそれらのラットでもPGD_2の睡眠促進作用が見られており、したがってPGD_2が直接神経細胞に作用するのでなく、血管やグリア細胞を介した今日までよく知られていない新たな睡眠調節機構を介して睡眠を促進している可能性も考えられる。また、脳脊髄液中のPGD_2の濃度が睡眠・覚醒と非常に密接に係わり合って変動していることも明らかになりつつあり、現在さらに検討中である。
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