本研究では、第1の目的として、細胞内カルシウムイオン濃度を例にとり、これまでより一歩進んだ細胞間相互作用により誘導される刺激伝達の測定、可視化の実用化を目的としていた。この点は、平成7年度までに一応の完成をみた。第2の目的として、さらに生きた臓器(組織)内での刺激伝達の測定、解析法などがあった。この目的にそって、平成8年度は次のような点に重点をおき研究を行なった。 まず、マウス胎仔胸腺を用いて臓器内での細胞間相互作用による反応を解析した。実際には、マイクロインジェクション法(現有設備)を用いて、胸腺内にスーパー抗原などを注入し、それによって起こる細胞内カルシウム濃度を測定した。主に、Fura-2の取り込ませ方、胸腺の生かし方、焦点の合わせ方などの技術の開発に重点をおいて研究を行なった。マウス胎仔胸腺では、37度1時間の取り込み培養に於いて表層の細胞への取り込みは充分できることがわかった。臓器内で得られた細胞間相互作用の結果と2種類の浮遊細胞での細胞間相互作用で得られた結果を比較検討した。問題点として残ったのは臓器内での測定には、やはり、焦点のあわせ方が難しい点であった。この点については、米国で新しく開発された、デコンボリューションシステムなどを取り入れて解析することが今後の課題として残った。
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