平成6、7年度は細胞反応用37℃恒温チェインバーの設計、制作を一つの大きな目的にしていたが、米国オプトメトリクス社のチェインバーを改良し、反応がうまく起こることが確かめられた。微小温度計を用いてこのチェインバーの温度の変化を数十分から数時間にかけて計測したが、37℃±1.0℃の範囲でうまく調節されていることがわかった。T細胞を抗T細胞レセプター抗体で刺激した場合に誘導される細胞内カルシウムイン濃度の上昇を測定する場合、連続1時間の測定にも耐えるシステムであることがわかった。このシステムをつかって、抗原提示細胞とT細胞での細胞間相互作用でおこる細胞内カルシウムイン濃度の上昇を旨く測定する事ができた。画像取り込みについても、冷却CCDカメラを用いたため、以前の高電子倍増管を用いたものよりも格段に画像がきれいになった。さらに、平成8年度は、生きた臓器(組織)内での刺激伝達の測定、解析法の検討という目的にそって研究を行なった。まず、マウス胎仔胸腺を用いて臓器内での細胞間相互作用による反応を解析した。実際には、マイクロインジェクション法を用いて、胸腺内にスーパー抗原を注入し、それによって起こる細胞内カルシウム濃度を測定した。主に、Fura-2の取り込ませ方と焦点の合わせ方などの技術の開発に重点をおいて研究を行なった。マウス胎仔胸腺では、37度1時間の取り込み培養に於いて表層の細胞への取り込みは充分できることがわかった。問題点として残ったのは臓器内での測定には、やはり、焦点のあわせ方が難しい点であった。この点については、米国で新しく開発された、デコンボリューションシステムなどを取り入れて解析することが今後の課題として残った。
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