Helicobacter pylori(H.pylori)と上部消化管疾患との関連が明らかになるにつれ、感度、特異度だけでなく、侵襲が少なく、簡便かつ迅速な、H.pylori感染診断法が望まれる。H.pylori感染診断はこれまで、胃粘膜生検組織における鏡検下同定、培養が特異度が高い方法として行われてきたが、簡便性、迅速性に欠け、特殊な設備を要することから、実施可能な施設が限られていた。我々は抗H.pyloriウレアーゼに対するモノクローナル抗体をウレアーゼ補足用チップ(内径1.2mm)に固相化したものを、内視鏡用に開発した。このチップをアダプターで内視鏡用チューブに装着し、胃粘液をチップ内に吸引後、チップをはずし吸引及び洗浄用のポンプ作動回路を設けている測定装置内pH測定セルに挿入する。チップが挿入されスタートボタンを押すと、自動的に基質希釈液でチップ内を洗浄し、抗ウレアーゼ抗体に結合したH.pyloriのウレアーゼ以外を洗浄で洗い流す。そして、尿素を含む基質をセル内に送りH.pyloriのウレアーゼに反応させ、産生されるアンモニアによるpHの変化を測定する。内視鏡用に作成したチップを、pH測定セルに挿入することでウレアーゼ活性が自動的に測定され、約20分でH.pylori感染の診断が行える。本システムにおいて、H.pylori菌自身で検討したところ、現在のところウレアーゼ活性とH.pyloriの菌体数との相関が認められ、菌体数10個以上で感知することが出来た。臨床検討において、培養検査との比較では感度92.3%、特異度89.7%であった。本法は低侵襲性かつ簡便迅速な検査法であり、臨床応用が有効な方法であると考えられた。
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