Helicobacter pylori(H.pylori)感染は慢性萎縮性胃炎の主な原因と考えられ、さらに分化型胃癌の危険因子とされている。また、消化性潰瘍、特に十二指腸潰瘍の病態においてもH.pylori感染の強い関連が認められている。H.pylori感染と病態との関連が明らかにされるようになり、H.pylori感染診断は治療を考慮するうえにも臨床上重要となってきた。すなわち、H.pyloriを除菌することにより、胃粘膜の炎症所見の改善が認められ、H.pylori感染陽性の十二指腸潰瘍患者ではH.pyloriの除菌により潰瘍の再発がおさえられると報告されている。さらに、H.pyloriの若年期からの持続感染が慢性胃炎から萎縮性胃炎へと移行し、分化型胃癌の発生に関与していると考えられており、H.pyloriの除菌は分化型胃癌の発生の低下にも寄与すると考えられる。そのためには、H.pylori感染の迅速簡便安価な診断法の確立が必要である。我々はH.pyloriに対する抗体を作成し、これをウレアーゼ補足用チップ(内径1.2mm)に固相化したものを、内視鏡用に開発した。このチップをアダプターで内視鏡用チューブに装着し、胃粘液をチップ内に吸引後、チップをはずし吸引及び洗浄用のポンプ作動回路を設けている測定装置内pH測定セルに挿入する。チップが挿入されスタートボタンを押すと、自動的に基質希釈液でチップ内を洗浄し、抗ウレアーゼ抗体に結合したH.pyloriのウレアーゼ以外を洗浄で洗い流す。そして、尿素を含む基質をセル内に送りH.pyloriのウレアーゼに反応させ、産生されるアンモニアによるpHの変化を測定する。H.pylori感染診断はこれまで繁雑で時間がかかり、限られた施設でなされているだけである。しかし、H.pylori感染の病態との関係が明らかにされるにつれ、臨床上H.pylori感染診断は重要であり、一般病院に広く普及されることが望まれる。本研究における経胃内視鏡用ウレアーゼ活性測定装置のH.pylori感染診断能は、培養法との比較で感度92.3%、特異度89.7%と、市販の内視鏡生検ウレアーゼテストであるCLOテストの感度81.0%、特異度89.0%を上回る成績であった。迅速性も診断に約15分と簡便であった。
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