研究概要 |
遺伝性の難病の出生を予防するために、発端者の診断はもとより、確実な保因者診断が必要であり、その新診断の開発を行っている。既知変異検出法を用いた東洋人フェニルケトン尿症(PKU)の診断法の開発;日本人および中国人のPKU患者の病因変異を13種類同定した。それらのうち8種類の変異(R111X,IVS-4,Y204CR234Q,R413P,R252W,R278W,R241C)を日本人患者の診断法に用い、7種類の変異(R111X,IVS-4,Y204C,R234Q,R413P,R261Q,Y356X)を中国人患者の遺伝子診断法に用いた。乾燥濾紙血液から抽出したDNAを検体とする。変異検出法としてPCRとアガロース電気泳動のみで検出できるASPCR法を開発した。変異のそれぞれにについて正常プライマーと変異プライマーを設計し、PCRの条件設定を行った。1チューブで数変異の検出が出来るように条件を設定することによって複数の変異の有無を同時に検出することが出来た(multiple ASPCR)。多検体処理核酸電気泳動装置の開発;泳動槽のバッファーを循環・冷却をすることにより、連続反復泳動を可能にし、CCDカメラを使用することによりDNAの随時蛍光検出を可能にした。この装置により、短時間での多検体処理が可能となった。以上の診断法で日本人PKUの変異アレルの60%、中国人PKUの変異アレルの65%が検出可能であった。PKUの多型診断法の開発;フェニアラニン水酸化酵素遺伝子内にあるSTR多型を利用した遺伝子診断法を確立した。STR部を挟む様に蛍光プライマーを作成してPCRを行い、自動シークエンサーでPCR産物の長さを計る簡便な方法を確立した。この方法で中国人PKU44家系を検討したところ、52%が診断可能であった。既知変異検出法とSTR多型診断を組み合わせることにより70%の家系は診断可能となった。
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