本研究はジストロフィンが全く欠損したDuchenne型筋ジストロフィーにおいて「リバータント」と呼ばれるジストロフィン陽性筋細胞が少数出現することに着目し、このジストロフィン陽性細胞の出現メカニズムを分子生物学的に解明し、そのジストロフィン産生機序をDuchenne型筋ジストロフィーの治療に応用しようとするものである。 初年度の研究では、通常でも極く微量にしか存在しないジストロフィンメッセンジャーRNA(mRNA)を少数の筋細胞でも解析が可能とするため、超微量のmRNA解析手技の確立を計った。その結果、白血球内のジストロフィンmRNAを逆転写酵素を用いcDNAに変換し、さらに重複PCR法を行なうことによりジストロフィンmRNAの全領域を10断片に分け増幅することに成功した。 さらに、「ジストロフィンmRNA前駆体のスプライシングを制御することによりDuchenne型筋ジストロフィーの治療が可能である」という斬新なアイデアに基づき分子生物学的手法を用い検討を行なった。これは、ジストロフィンのエクソン配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用い、スプライシング時にエクソンを人為的にスキップさせるものである。そして、試験管内でアンチセンスオリゴヌクレオチドの作用によりエクソンのスキッピングを誘導させることに成功した。今後、この画期的な結果に基づき筋細胞に直接アンチセンスオリゴヌクレオイドを作用させ治療への応用性を検討する予定である。
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