平滑筋細胞由来成長因子(SDGF)遺伝子のクローニングと特異的抑制剤の開発

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06557053
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 森崎 信尋 千葉大学, 医学部, 講師 (40174411)
• 研究分担者: 斎藤 康 山形大学, 医学部, 教授 (50101358) ; 神崎 哲人 成田空港検疫所, 厚生技官
• キーワード: 平滑筋細胞由来成長因子(SDGF) / 平滑筋細胞 / 塩基性線維芽細胞成長因子 / 動脈硬化

研究概要

平滑筋細胞由来成長因子(SDGF)の免疫学的性質:SDGFは家兎大動脈培養平滑筋細胞を4代以上培養し、無血清下で分泌させて採取した。このDNA合成活性に対し、抗血小板由来成長因子(PDGF)抗体、抗トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)抗体、抗塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)抗体で抑制をみると、bFGF抗体(抗ヒト羊抗体)に特異的に抑制がみられた。1μg/mlでSDGF活性の約50%が抑制され、5-20μg/mlで60-90%、50μg/mlでは90-100%が抑制された。このことから、SDGFはbFGFと免疫学的に交差するものと推測された。しかし、既にSDGFは生物学的にもbFGFとは異なることを確認しているので、免疫学的に交差するが違う物質であると考えられる。
2.平滑筋細胞由来成長因子(SDGF)のクローニング:クローニングの戦略として、SDGFを精製してアミノ酸配列の一部を決定し、そこからcDNAを作成してプローブとする方法は、十分量のSDGFを精製するためには極めて大量のメディウムを要するので、上記の情報を利用して行うこととした。まず、抗体そのものを用いて、得られたクローンをスクリーニングする方法は感度が十分ではなかった。そこで、SDGFはFGFのスパーファミリーに属する因子であろうと予測し、既に報告されているFGFのスーパーファミリーの共通配列の部分を合成するプライマーを作成し、RT-PCR法でまず断片を得ることとした。cDNAライブラリーは家兎培養平滑筋細胞のうち、SDGF活性を持つものをスクリーニングし、RNAを採取し、そこから、cDNAを作成し、PCR法でDNA断片を得た。現在、これをpUC19に挿入し、大腸菌で増やし、配列の解析を行っている。今後このうち非FGFのものをクローニングする予定である。

研究成果

• [文献書誌] Kanzaki T,Sinomuya M,Ueda S, Morisaki N,Saito Y,Yoshida S: "Enhanced arterial intimal thickening after baloon catheter injury on diabetic animals accompanied by PDGF-β-receptor overexpression of aortic media" Eur J Clin Invest. 24. 377-381 (1994)
• [文献書誌] Morisaki N,Yokote K,Takahashi K,Otabe M,Saito Y,Yoshida S,Ueda S: "Role of phospholipase Az in expression of the scavenger pathway in cultured aoitic smooth muscle cells stimulated with phorbol 12-myristate β-acetate" Biochem J. 303. 247-253 (1994)
• [文献書誌] Morisaki N,Takahashi K,Shiina R,Zenibayashi M,Otabe M,Yoshida S,Saito Y: "Platelet-denved grouth faster is a potent stimulator of expression of intercellular adhesion molecule-1 in human arterial smooth muscle cells" Biochem Biophys Res Commun. 200. 612-618 (1994)
• [文献書誌] 森崎信尋: "血管壁平滑筋細胞の遊走/増殖とエイコサペレタエン酸" 治療学. 28. 637-640 (1994)
• [文献書誌] 神崎哲人、森崎信尋: "TGF-βの血管壁細胞への作用-in vitro,in vivo" Mebio. 11. 87-92 (1994)
• [文献書誌] 神崎哲人、森崎信尋: "Transforming Growth Factor-β" 現代医療. 26. 3911-3916 (1994)