研究概要 |
ヒトインスリン遺伝子を導入した下垂体由来細胞(AtT20)において,ヒトインスリン遺伝子の発現を確認した後,グルコース・トランスポーター2型(GT2)遺伝子及びグルコキナーゼ(GK)遺伝子を,単独または同時に導入し,AtT20HI-GT2細胞,AtT20HI-GK細胞,及びAtT20HI-GT2,GK細胞を作成した。各種ブドウ糖濃度下における,AtT20HI-GT2細胞,AtT20HI-GK細胞,及びAtT20HI-GT2,GK細胞による培養液中へのインスリン分泌は,AtT20HI-GT2細胞,AtT20HI-GK細胞では1mM以下でブドウ糖濃度依存性の増加を示したが,それ以上の濃度ではブドウ糖濃度依存性のインスリン分泌増加を認めなかった。AtT20HI-GT2,GK細胞では0.1〜25mMの範囲でブドウ糖濃度依存性のインスリン分泌増加を認めた。 潅流実験においてブドウ糖濃度を5mMから25mMにステップ状に増加させた時のインスリン分泌は,AtT20HI-GT2細胞,AtT20HI-GK細胞では有意な分泌増加を認めなかったが,AtT20HI-GT2,GK細胞では10〜12分後にピークを持つ-相性の増加を認めたが,二相性のインスリン分泌は認められなかった。 本研究で構築した細胞は,糖尿病の遺伝子治療の可能性追求のモデルとなるのみならず,現在未解決な膵B細胞ブドウ糖認識機構,細胞内情報伝達機構,インスリン分泌機構の解明に資するものと考える。
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