研究概要 |
慢性骨髄性白血病(CML)の自家骨髄移植(PBSCT含む)を実現するためには、Ph陽性細胞のex vivo purgingが必須の条件である。変異性や発癌性もないといわれる温熱処理をex vivo purgingに導入(Blood 67:802,1986.)し、既に急性白血病(AML,ALL等)の自家骨髄移植に臨床応用(BMT7:163,1991.)してきたが、Phクローンは熱にやや抵抗性で、熱処理単独では2-3 log程度のpurging効果であり、Phクローンの完全除去(5-6 log)には不十分であることが分かった。そこで、温熱によるPh陽性細胞の殺細胞効果(アポトーシス)をより増強する目的で、AZTや造血のnegative regulator(IFN,TNF等)、さらに熱ショック蛋白誘導阻害剤(Quercetin)などの併用を試みたところ、細胞形態およびDNA fragmentationから、Quercetinが最も強力な熱処理によるアポトーシス誘導剤であり、BCR/ABL遺伝子導入細胞のみならず、CML患者の骨髄細胞(末梢血)で確認した。即ち、熱ショック蛋白誘導阻害剤であるQuercetin(5-20μM)の添加で,Phクローン(CML-CFU)を5-7 log除去することが可能である。更に、Quercetinの添加で、細胞形態やDNA framentationのみならず、Fas抗原の発現が著しく増強され、熱ショック蛋白誘導阻害剤は熱による細胞死(アポトーシス)を誘導することが確認された。その結果、温熱+Quercetin処理でPhクローン(CML-CFU)を4-6 log程度除去することが可能となり、この点、CMLの自家骨髄移植(PBSCTを含む)の実用化が一歩前進した。 一方、Quercetinの添加で、ヒト造血幹細胞(CFU-GM)の細胞死も1 log程度増強され、その阻止の目的で、熱ショック蛋白誘導剤(アポトーシス阻止)であるインターフェロン(IFN)(BMT8:301,1991.)の先行添加など検討中である。
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