研究課題/領域番号 |
06557065
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗原 裕基 東京大学, 医学部(病), 助手 (20221947)
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研究分担者 |
前村 浩二 東京大学, 医学部(病), 医員
児玉 龍彦 東京大学, 医学部(病), 助手 (90170266)
加我 君孝 東京大学, 医学部(病), 教授 (80082238)
石川 隆俊 東京大学, 医学部(医), 教授 (30085633)
矢崎 義雄 東京大学, 医学部(病), 教授 (20101090)
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キーワード | ジーンターダティング / エンドセリン / 血圧調節 / 胎児発達 / 先天性疾患 / 遺伝子診断 / モデル動物 |
研究概要 |
我々はマウス胚幹細胞における相同組み換えによりET-1遺伝子に変異を導入し、ET-1遺伝子欠損マウスを樹立した。遺伝子完全欠損型(ホモ接合体)は全例呼吸ができずに死亡し、下顎・耳介・舌など頭頚部に明らかな形成異常を認めたため、頭頚部先天性疾患(Treacher-Collins症候群・Pierre-Robin症候群など)のモデルとしての有用性を含め、さらに表現型の解析を進めた。器官形成初期の解析や骨格系の解析などからこれらの異常が鰓弓形成の異常に基づくことが明らかになった。さらに、ET-1は下顎弓の器官培養において舌上皮の発達亢進作用を示し、かつ胎生中期においてET-1mRNAの発現は鰓弓の上皮細胞に最も著明に認められた。胎生期の発現をさらに詳しく見ると、ET-1は大血管や心流出路の内皮細胞にも発現している。そこでホモ接合体の心血管系を解析すると、特にET受容体拮抗薬や抗ET-1抗体の母体への投与により大動脈弓の異常や心室中隔欠損などの心血管系の形成異常が起こることも明らかになった。ET-1は鰓弓に由来する頭頚部の組織・器官や心血管系の発達において、おそらくはその主要な構成細胞である神経堤由来の上皮性間葉細胞を標的としてその増殖または遊走・分化を促進していると考えられる。これまでET-1は血管作動性物質としてとらえられてきたが、本研究により形態形成因子としての新しい側面が明らかになり、ET-1欠損マウスは頭頚部先天性疾患の動物モデルとして、その発症機序や高い合併頻度を有する心奇形との関連の解析に有用と考えられた。こうした知見に基づき、ヒト遺伝子のET-1遺伝子の異常についての検索システムを確立し、現在約20例の頭頚部先天性疾患症例の遺伝子解析を行っている。
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