1.脳死モデルの作成 日本ザルを用い、全身麻酔下に頭蓋骨に小孔を開け、バルンカテーテルを硬膜外腔に挿入してバルンを蒸留水の注入により拡張させ、脳圧亢進モデルの作成を試みた。脳圧はバルンカテーテルの末端を圧トランスデユーサーに接続することにより測定し、持続的にモニタリングした。その結果、脳圧はバルンへの蒸留水注入量に応じて顕著に上昇し、カテーテル挿入側の瞳孔散大、対光反射消失は脳圧が30mmHg以上に上昇した時点より確認された。この瞳孔散大および対光反射消失は可逆性であり脳圧が30mmHgに維持されてから、5分後に消失した。そのため、さらに数mlの蒸留水を注入し、脳圧を60mmHg以上に上昇させたところ、これらの反射は不可逆性となった。また、脳圧上昇に伴い体動脈圧も顕著に上昇し、さらに徐脈傾向を認めるなど極めて臨床場面と酷似した現象が観察された。この結果、日本ザルによる脳死モデルの作成は可能であることが確認された。 2.コントロール群の作成 脳死心停止群の作成に先立ち、臨床をシミュレートした手技によって心拍動下にドナーから心肺を摘出し、まず右肺、次いで左肺をレシピエントに同種移植し、移植肺のみによる移植後の呼吸循環動態を検討してコントロール群とした。肺血管はPG12とSteroidを添加した500mlのEp4液でフラッシュした。移植には約6時間を要し、左肺の阻血時間は約4時間であった。移植後48時間人工呼吸下に管理し、呼吸循環動態を測定したが移植肺は極めて良好な機能を発揮していることが確認された。その後麻酔から覚醒させ、自発呼吸の下に生命の維持が可能であることも確認された。サイクロスポリンとアザチオプリンで免疫抑制し、今後は慢性期の移植肺機能の検討を予定している。
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