脳死後心停止させたドナーから摘出した心肺を24時間保存後レシピエントとなるサルに一期的両側肺移植し、脳死後心停止ドナーからの摘出肺が保存可能かどうかを検討した。 (方法)ニホンザルを用いて脳死心停止後に心肺を潅流・摘出し、24時間の保存後移植を行った。脳死の作成、心肺の潅流・摘出、両肺移植手技は前年度に報告した方法により行った。6時間の脳死状態を経たドナーは人工呼吸器停止により心停止させた。その後我々が開発したEP4液にPGI2を添加して両肺を潅流後、心肺を摘出し4℃EP4液に24時間単純浸漬冷却保存した。24時間保存後レシピエントに右肺、左肺の順に一期的両肺移植を行った。術後人工呼吸器にて36時間呼吸管理を行い、その間、動脈血ガス分析、肺動脈圧、心拍出量を測定した。移植肺の機能評価後は自発呼吸に戻して観察した。 (結果)心停止保存群として4例の移植実験を行い、前年度までに行ったコントロール群、脳死後心停止群と比較検討した。心停止保存群の全例が両側肺移植手術に耐え、機能評価後は人工呼吸器から離脱し酸素投与なしの自発呼吸による生存が可能であった。心停止保存群の1例は285日生存し両側の腎腫瘍による腎不全のために死亡した。その他には1例が術後48日目に開胸肺生検後発症した気胸のため、1例が10日目に敗血症のため、もう一例は5日目に血腫による肺静脈狭窄のために死亡した。手術直後から36時間の移植肺機能評価においては動脈血酸素分圧、肺動脈圧、全肺血管抵抗に関してコントロール群、脳死後心停止群と同等の良好な値で経過することが明らかとなった。 (結論)以上の結果から脳死後心停止ドナーからの摘出肺の24時間保存が可能であることが確認され、脳死後心停止ドナーの肺移植への適用における臨床での問題が1つ解決された。
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