研究概要 |
簡便に施行可能な右心補助システムとして末梢静脈から挿入する静脈内軸流血液ポンプの開発を進めている.前年度における検討を基に,動脈内軸流ポンプ(Hemopump)を応用し,末梢静脈より順行性に挿入するロータ,ステ-タ及びカニューラを設計,作製し,駆動系に装着した.成山羊を用いた急性実験において末梢静脈からの挿入は,透視下に下大静脈に吻合した人工血管よりバルーンカテーテルによるガイドにて特に問題なく施行し得た.また,臨床上右心補助が必要と思われる肺高血圧,および両心不全状態を想定し,急性実験において肺動脈狭窄および左心補助下の心室細動を作製し,本システムによる右心補助効果を検討したが,充分な流量の保持および右心負荷の軽減が得られた.さらに,慢性実験として,正常心成山羊3頭を用い,左側臥位において,下大静脈の腎静脈流入部より末梢側に人工血管を逢着し,本システムの挿入を行った.48時間の循環補助を試み,本システムの操作性,抗血栓性,溶血および挿入に伴う組織の損傷などについて検討を行った.その結果,2頭においては48時間の補助を行い得たが,1頭においてはケーブルの断線を認めた,本システムは,高速回転をケーブルを介して伝達しており,軽度のケーブルの折れも断線につながる.今回の実験では健常な山羊を用いているため,その動きは激しく本システムの固定が完全には行えないために,断線を生じた.しかし,本システムの臨床応用においては,安静状態で使用されると想定されるため,特に問題はないと考えている.また,最長48時間の駆動において,溶血,組織の損傷は軽度であった.従って,本システムは,短期使用の簡便な右心補助システムとして有望と考える.
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