研究課題
試験研究(B)
病変血管の置換手術として人工血管による再建術が行なわれているが、内径6mm以下の小口径人工血管の開存性は極めて悪く、口径3〜4mmにおいては臨床応用可能な人工血管は現時点ではない。また、口径1mm以下の超小口径人工血管の開発は全く未踏分野である。閉塞に至る主要因子として、移植初期では血栓形成、慢性期では吻合部に好発する内膜肥厚による狭窄であることが指摘されている。従って、これらの問題を克服すれば、高度生体適合性を有する(超)小口径人工血管が開発でき、循環系医学へ大いに貢献できることになる。研究代表者らは、(1)人工材料と血液相互作用及び血栓形成過程、(2)人工基材と細胞挙動及び組織形成過程、(3)表面光化学に基づく人工基材の微細加工技術の研究を系統的に展開し、これらの基盤の上に、最近3、4年新しい設定思想による(4)階層性ハイブリッド血管壁組織体形成によるハイブリッド小口径人工血管の開発、及び(5)ハイブリッド組織体の力学的ストレス負荷による分子・細胞レベルでの配向・形質変換(合成型平滑筋細胞の収集型への変換)についてのバイオメカニクス的研究を行なってきた。本研究で開発する人工血管はこれらの研究の成果をもとにした、新しい概念、材料設計及び成型加工技術に基づくものであり、これらのプロトタイプは既に予備的研究において一部実現化している。本年度では次の各要素因子:1)移植初期において非血栓性、2)多孔質化による外側と内腔間の細胞交通性による組織の進入促進、3)血管壁組織の再構築と機能化、4)宿主血管との力学適合性、5)任意の口径、膜厚、多孔度及び長さが制御でき、簡便で再現性のある成型加工技術を組み込み、研究代表者らによって新しく見い出されたバイオメカニクス、バイオマテリアル及びバイオロジーの基盤原理を複合化した臓器工学的手法によって、(超)小口径人工血管の開発を意図した。これらの並列的研究は各々初期の目標を達成した。
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