研究概要 |
我々は、抗子宮体癌モノクローナル抗体MSN-1を用いて子宮内膜細胞検体のMSN-1認識抗原(主としてLewis^b型糖鎖)の量を酵素免疫測定法により測定し、正常内膜細胞と体癌細胞におけるMSN-1認識抗原量の量的差異から両細胞を鑑別する子宮体癌の新しい診断法EmC-EIA法を開発した。さらに、当初開発したEmC-EIA法のプロトタイプを改良し、検体の長期保存が可能であり、しかも測定手技が簡便であることから、よりキット化に適した新しい測定系EmC-EIA Sandwich法を開発するとともに、多数の臨床検体を用いてその臨床的有用性を明らかにした。EmC-EIA Sandwich法は、子宮内膜細胞診施行後の検体採取器具に付着した残存細胞を界面活性剤にて可溶化して、MSN-1あるいは細胞の蛋白量を反映するアクチンに対する抗体を固相化したマイクロタイタ-プレート上に添加し、さらに酵素標識したMSN-1、抗アクチン抗体を加えるSandwich EIAにより、細胞検体の単位蛋白あたりのMSN-1認識抗原量を測定する方法である。正常内膜48例、内膜増殖症11例、子宮体癌45例を用いて測定した結果、正常内膜例の平均値+2S. D. をカットオフ値とした場合の陽性率は、正常内膜4.2%,内膜増殖症45.5%,子宮体癌66.7%であり、子宮体癌の分化度別陽性率は、高分化型内膜腺癌で76%と特に高値を示した。また、細胞診とEmC-EIA Sandwich法を施行し得た子宮体癌30例における検討にて、それぞれ単独の陽性率は細胞診63.6%,EmC-EIA Sandwich法63.6%であり、両者を組み合わせることによりその陽性率は83.3%に上昇した。 以上の研究にて、EmC-EIA Sandwich法は、子宮体癌、特に細胞診にてその判定に迷うことが多い高分化型内膜腺癌に対する細胞診の補助診断法として有用であり、しかもキット化に適するなどの特徴を有することから、スクリーニングに応用可能であることが判明した。
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