人眼への応用を試みたが、安全許容範囲であってもアルゴンレーザーは大変まぶしく固視が困難であることが分かり、以後動物実験は、家兎眼と猿眼を用いて行った。まず試作装置に、ロジスティクボードを組み込み、又データ処理のソフトウェアを改造し、従来の0.18秒の測定結果を10秒のデータ処理時間を経て画面に表示する方式をかえ、0.125秒毎に連続7秒までの測定を行い、その間の測定結果全て、又は一部を画面に表示する方式とした。本方式により、心拍に同期する末梢血流速度の周期的変化をとらえることができるようになった。カルシウム-拮抗剤の効果を兎眼で検討した所、ニカルジピン、ニルバジピンは網膜末梢血流量を静注後90分間で約10%前後増加させたに止まったが、セモチアジルは約25%増加、プリモニジンは、両者の中間の値であった。薬剤による差は、各々カルシウムチャンネルに対する作用機序の微妙な差異及び脂溶性等の物理化学的な差によるものと考えられ、網膜循環改善に最適なカルシウム-拮抗剤の選別の可能性が示された。又同試作機に半導体レーザーを組み込み、網膜静脈における血流速度を簡便に測定できることを可能にした。In vitro基礎実験の結果より作製したノモグラムによる、人網膜静脈血流速度(径約50μ)は、約10mm/秒であった。猿眼で抗緑内障薬、チモロール、及びプロスタグランジンF_<2α>誘導体ラタノプロストの一回、及び1週間連続点眼を行った所、両剤とも網膜静脈血流速度及びそれより計算した血流量に変化を与えないことが分かった。
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