研究概要 |
近年細菌の16S ribosomal RNA遺伝子の塩基配列は分子遺伝学的手法による細菌の分類、同定の基準として用いられている。 本研究では歯周病細菌の中でActinobacillus actinomycetemcomitans(Aa),Prevotella intermedia(Pi),Porphyromonas gingivalis(Pg)について16S rRNA遺伝子の塩基配列を分析し、PCR法による歯周病細菌検出、同定のためのプライマーを開発した。 歯周炎病巣サンプルからの細菌DNAの簡便な抽出方法について検討し、市販のDNA精製マトリクスが最適であることを見いだした。抽出したサンプルについて開発したPCRプライマーを用いて歯周病細菌Aa,Pi,Pgそれぞれの16S rRNA遺伝子をPCR法により増幅し、検出するという歯周病細菌検査システムを確立した。 本方法は従来1週間以上の検査期間を要していた培養法に比べ、サンプル採取から細菌の検査まで約5時間で完了でき、迅速性の面で優れていた。またサンプル中100個の細菌でも検出、同定でき高感度であった。加えて多検体を一度に処理でき、操作性の面でも日常の臨床細菌検査に十分応用できるものであった。 岡山大学歯学部附属病院第二保存科では、現在、本研究で確立したPCR法による細菌検査システムを用いて、早期発症型歯周炎患者やインシュリン依存型糖尿病患者さらには医学部附属病院に入院中の患者からの歯周炎病巣サンプルについて細菌検査を実施し、臨床症例およびデータを蓄積している。得られた検査結果は治療計画立案や治療効果判定に役立てている。さらに関連病院である歯科診療所や開業歯科医院に本検査システムを広報し、検査依頼をうけた臨床サンプルについて細菌検査を行い、一般歯科医が本検査システムを利用するためのネットワークを構築しつつある。
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