研究課題
試験研究(B)
顎関節疾患の外来における簡便な画像診断法として、超音波を用いた、いわゆるBモードのエコー(echography)を利用することが試みられているが、解剖学的形態の制約から超音波の入射方向が制限を受けることや、骨面からの反射波によるア-ティファクトにより鮮明な画像は得られていない。そこで、我々は、顎関節部を連続的にBモード超音波断層撮影を行ない得られた画像情報をメモリに蓄積した後、コンピュータにより画像構築を行なうことにより、理論的には、矢状断を始めとするあらゆる方向の像が得られることに着目し、これを具現した顎関節用超音波CTの開発を進めることを目的として本研究に着手した。本研究においては、初年度として、リニアプローブをスライス方向に連続的に移動させる試作超音波CT撮影装置を製作しこれに試作画像処理ユニットを接続し、おもに、骨組織表面と関節軟組織の矢状断像構築を試みることがその具体的目標であった。まずプローブの周波数および走査形式決定に関し、数種の試作実験を繰り返した結果、関節部の猫出に最も優れていた電子走査方式の7.5MHzプローブを採用した。スキャンユニットは、可変アームに取付けたステップモータによる自動駆動方式のものを作製した。また、汎用超音波診断装置から送られてきた超音波断層画像を再構成する画像処理部分は,市販のパーソナルコンピュータ(NEC9800シリーズ)を中央処理装置として用い、これに画像取り込み部分と画像処理部分を付加し、機器の完成をみた。現在新規開発したソフトウェア等の最終調整中であり、具体的な結果は、これを論ずることはできないが、少なくとも、現時点においては、超音波を用いて顎関節部の矢状断面像を初めて構築することに成功したといえる。ただし、スキャンする際の頭部の位置付けに関し、僅かなずれが大きな影響を及ぼすことも明らかになったので、この点の解決策探求も含め次年度へ研究遂行中である。