自己分泌型遊走因子AMFは、悪性黒色腫をはじめ、線維肉腫や膀胱癌などの浸潤・転移能の高い癌細胞で産生されていることが報告されている。我々は、高浸潤.転移型扁平上皮癌細胞LMF4の培養上清がド-ズディペンデントに遊走能を誘導することをボイデンチェンバーにて確認した。この培養上清を、ゲル濾過カラム、DEAEカラムにて精製したところ、分子量55kD(還元時65kD)の癌細胞遊走活性糖蛋白(LMF4-AMF)が精製された。この分子量はすでに報告されているAMFの分子量に一致し、またLMF4-AMFは線維肉腫細胞の遊走をも誘導したことから、LMF4-AMFは報告されているAMFと同一のものであることが示唆された。 さらにLMF4細胞の遊走は、線維肉腫細胞由来のAMFによっても誘導されたことから、LMF4細胞は機能的なAMFレセプター(AMFR)を発現していることが示唆された。このAMFRの発現は、高浸潤・転移型扁平上皮癌細胞で高く、低浸潤・転移型扁平上皮癌細胞で低いことを、ノーザンブロット分析ならびにRT-PCRによって確認した。そこで臨床材料を用いてRT-PCRを行い、原発巣ではAMFRの発現はTNM分類においてTよりもむしろNに相関して高く、また転移巣と原発巣を比較すると転移巣の細胞の方が高いことが明らかとなった。 以上の結果から、口腔領域の扁平上皮癌細胞もAMFを産生し、そのレセプターであるAMFRを介して、遊走能を発揮することが示唆された。しかもAMFRの発現は扁平上皮癌の転移に相関して高くなっていることから、AMFおよびAMFRは癌細胞の転移に深く関わっているものと推察された。
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