研究概要 |
進行癌患者の末梢血リンパ球を体外でIL-2と培養し,誘導したlymphokine-activated killer(LAK)細胞を再度同一患者に投与するLAK養子免疫療法をさらに効果的に行うためには,LAK細胞を量的にまた質的に高め,さらに腫瘍組織への集積性を高める必要がある。我々は,LAK細胞の増殖と細胞障害活性を指標に添加する増殖因子の検索を行い,臨床応用を目的としたLAK細胞誘導のための無血清培地の開発を行い,同培地で誘導したLAK細胞の細胞障害活性は,10%ヒト血清存在下でのLAK細胞のそれより数倍高いことを既に報告した。そこで,LAK細胞の腫瘍局所への集積性を高めるために,多くの口腔癌において過剰発現している上皮成長因子(epidermal growth factor:EGF)受容体に対する当科で作製したモノクローナル抗体12-93をLAK細胞表面に結合させた抗体結合LAK細胞の細胞障害活性を検索し,抗体結合LAK細胞を用いた養子免疫療法の可能性を究明した。12-93抗体結合LAK細胞の細胞障害活性の検索を行った結果,EGF受容体を発現していないRaji細胞に対しては12-93抗体結合LAK細胞および抗体非結合LAK細胞ともに同等の細胞障害活性を示した。一方、EGF受容体を過剰発現しているA431細胞及び中等度発現しているHSG細胞に対して、12-93抗体結合LAK細胞の細胞障害活性は、抗体非結合LAK細胞と比較して有意な増強を示した。また、過剰の12-93抗体により12-93抗体結合LAK細胞の細胞障害活性は抑制された。したがって、口腔癌に対する増強効果はEGF受容体とLAK細胞表面に結合した12-93抗体による特異的な結合によると考えられた。このように、LAK細胞表面にEGF受容体に対するモノクローナル抗体を結合させることにより、腫瘍への集積性を高めより高い細胞障害活性が得られる可能性が示唆された。
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