現在、口腔癌治療は、外科療法、化学療法、放射線療法が主体であり、それらを併用することにより治療成績の向上がはかられてきた。現在の治療成績をさらに向上させるためには、LAK養子免疫療法をはじめとする能動的免疫療法を行うことが重要である。LAK細胞の抗腫瘍効果をさらに上げるためには、LAK細胞の集積性を高める必要がある。そこで、口腔扁平上皮癌の細胞表面に過剰発現している上皮成長因子受容体に対するモノクローナル抗体をLAK細胞表面に結合させることにより腫瘍内への選択的集積性を高め生体内においても高い抗腫瘍効果を得ることを目的に実験を行った。初年度では、常に高い細胞障害活性をもったLAK細胞を誘導するためにヒト血清を用いない無血清培養系の確立を試み、LAK細胞の増殖と細胞障害活性を指標に添加する増殖因子の検索を行いRD5F培地を開発した。さらに、当科でヒト上皮成長因子受容体に対するマウスモノクローナル抗体の作製を行い、免疫組織学的検索により、口腔癌において上皮成長因子受容体が過剰に発現していることを明らかにした。また、同抗体はin vitroで口腔癌の増殖を抑制しin vivoにおいてもヌードマウスに移植した口腔癌の増殖を著明に抑制することを明らかにした。次年度において、同抗体を大量に精製し当科で開発した無血清培地で誘導したLAK細胞表面にアビジン-ビオチン法を用いて結合させた。この抗体結合LAK細胞の口腔癌細胞に対する殺細胞効果を放射性クロム遊離試験を用いて検討した結果、上皮成長因子受容体を過剰発現している扁平上皮癌細胞や唾液線癌に対しては対照のLAK細胞に比べて高い殺細胞効果を示した。しかし、同受容体を発現していないRaji細胞やK562細胞に対しては効果増強を示さなかった。以上の結果、口腔癌に過剰発現している抗原に対するモノクローナル抗体を用いてLAK細胞の腫瘍集積性を増強できることが明らかになった。
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