研究概要 |
(1)大気粉じんから変異原物質を抽出するために使用されている様々な有機溶媒の中から,ニトロアレーン分析法とAmes法の併用に最適な抽出溶媒の検索をおこなった.1,3-, 1,6-, 1,8-ジニトロピレン(DNP),1-ニトロピレン(NP)及び直接変異原性物質の抽出効率はベンゼン-エタノール(3:1),アセトニトリル,エタノール,メタノールの順で高く,毒性を考慮するとこれらの中ではエタノールが最も適していると考えられた. (2)基本ニトロアレーン分析計では試料の前処理として必要な還元操作を,分析システムに亜鉛を充填した還元用カラムを導入することにより省略した.また,分離度を向上させるため,試料を還元後,最も還元成績体の濃度が高い部分をスイッチングバルブでハードカッティングして,分析カラムに導入した.これによって簡単な前処理のみで大気粉じん中の1,3-, 1,6-, 1,8-DNP及び1-NPが定量可能となった. (3)ニトロアレーン分析法の前処理操作では直接変異原性ニトロアレーンと同時に間接変異原性多環芳香族炭化水素(PAH)も定量化に抽出される.この試料をニトロアレーン分析計とPAH分析のための蛍光検出HPLCシステムをスイッチングバルブで併合したシステムに適用することで,両者の同時分析が可能となった.その結果,上記の4種ニトロアレーンに加えて8種PAHも1時間以内に定量可能となった. (4)大気中で2次生成することが知られている2-, 4-NP,2-ニトロフルオランテン,6-ニトロクリセンと1-NPを同時に分析するため,基本ニトロアレーン分析システムに妨害物質を除去するための精製用ODSカラム,還元を自動化する亜鉛充填カラムと分離・検出を改善する濃縮用ODSカラムを導入した.本法によって測定した金沢市市街地大気中の上記化合物濃度は10^<-12>-10^<-16>molm^<-3>の範囲にあった.
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