研究概要 |
1:補体制御因子,MCP,の構造と機能の解析 MCPと呼ばれる補体制御因子は麻疹ウイルスレセプターでもある。MCPの細胞外領域は、4個のSCRドメインとセリン-トレオニンに富む領域(ST-領域)とからなる。このST-領域には長さの異なる3種類があるが、その長さと補体制御活性や麻疹ウイルスレセプター活性との関連性については明らかでなかった。遺伝子工学的に3種類のST-領域のMCPを細胞膜に発現させ、両活性を比較した。その結果、i)麻疹ウイルスレセプター活性は、ST-領域の長さに反比例して弱くなる、ii)補体制御活性はST-領域の長さに比例して強くなることが明らかになった。 2:ハイブリッド型補体制御因子(MCP-DAF)の設計 補体制御因子として、MCPの他にDAFと呼ばれる膜蛋白質も存在する。この2種の制御因子のハイブリッド型は臓器移植に活用できると考えられる。そこで、遺伝子工学的にMCPのC-末端側にDAFを接続させたMCP-DAFハイブリッド分子を細胞膜に発現させ、補体制御効果を比較検討した。その結果、MCP-DAFハイブリッド分子は、DAF,MCP単独よりは強い制御活性を示すことが確認された。 3:ヒト補体制御因子を発現したブタ血管内皮細胞のヒト補体抵抗性の解析 ヒト補体制御因子、MCP,DAF,MCP-DAF,の遺伝子をブタ血管内皮細胞に導入し、これらの蛋白質を発現させ、ヒト補体抵抗性を検討した。これらヒト型制御因子を発現したブタ血管内皮細胞はヒト補体に対して抵抗性を示し、特にMCP-DAF,DAFが最も効果的であることが明らかになった。
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